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家賃の値上げ通知は拒否できる?更新のときの値上げ・更新料の扱いと、借地借家法・関東の相談窓口

年1割値上げが裁判で正当と確定したとき、払っていなかった差額に付く利息(借地借家法32条2項)

家賃の値上げ通知が届いても、その場で応じる義務はありません。東京都は、話し合いがまとまらない間も、今までの家賃を期日どおりに払えば住み続けられると案内しています。この記事では、法律のしくみ、通知が来たらすること、更新料、関東の相談先をまとめます(2026年10月6日確認)。

3行でわかる結論
  • あなたに値上げの通知が来ても、すぐに応じる必要はありません。まず理由の説明を求めましょう。
  • あなたが納得できないなら、今までの家賃を期日どおりに払い続けます。貸主が受け取らなければ、法務局に預ける「供託」ができます。
  • あなたが迷ったら、署名する前に、消費者ホットライン188など無料の公的な窓口に相談してください(通話料はかかります)。

制度は変わることがあります。手続きの前に公式情報もご確認ください。

家賃の値上げ通知に応じる義務はある?

応じる義務はありません。家賃を変えるには、貸主と借主の合意が要ります。

ただし、法律は、家賃を上げ下げしたいと請求できる場面を決めています。借地借家法(家を借りる人を守るための法律)の32条です。家賃が次のどれかの理由で「不相当」(今の事情に合わない)になったとき、貸主・借主のどちらからでも請求できます。

32条が挙げる理由例
土地・建物の税その他の負担が増えた・減った固定資産税などの負担の変化
土地・建物の価格の上下、その他の経済事情の変動地価や物価の大きな変化
近くの同じような建物の家賃と比べて不相当になった周りの似た部屋の家賃との差

請求はこれから先の家賃についてで、過去の家賃にはさかのぼりません(2026年10月6日、e-Govで条文を確認)。

東京都住宅政策本部は、借主は必ずしも値上げに応じる必要はなく、納得できなければ断れると案内しています。ただし、断ればずっと上がらないわけではありません。まとまらないときは、調停や裁判で決まり、上がることもあります。

この記事では東京都の案内をよく引きますが、法律(借地借家法)は全国で同じです。ほかの県に住む人にも、考え方は当てはまります。

契約に「一定の期間は家賃を上げない」という特約があれば、それに従います(32条1項ただし書)。定期借家契約(更新のない契約)で家賃の改定の特約があるときは、32条は使われません(38条9項)。特約どおりに家賃が変わり、断れないこともあります。

通知が届いたら、まず何をたしかめる?

契約書を出して、次の点を書面でたしかめ、やりとりの記録を残しましょう。

東京都は、一度同意すると、後から取り消すのは難しいと注意しています。値上げした家賃での更新契約に署名することも、同意にあたります。署名の前に内容をたしかめましょう。

話し合いがまとまらないときは?

  1. 今までの家賃を払い続ける

    借主は、値上げを正当とする裁判が確定するまで、自分が相当(妥当)と考える額を払えば足ります(32条2項)。ふつうは今までの家賃です。東京都は、今までの家賃を払えばこれまで通り住めると案内しています。期日どおりに払うことが大切です。

  2. 受け取りを断られたら供託する

    貸主が家賃の受け取りを断ったときなどは、法務局(供託所)に家賃を預ける「供託」ができます。供託すると、その分は払ったことになります(民法494条)。手続きの仕方は、法務局で聞けます。

  3. 裁判の前に、まず調停

    家賃の増減を裁判で争う前に、まず調停を申し立てる決まりです(民事調停法24条の2)。調停は、裁判官や調停委員が間に入る、裁判所での話し合いです。申し立て先は、原則として建物のある所の簡易裁判所です。裁判所は、2〜3回の期日を開き、おおむね3か月以内に終わることが多いと説明しています。

注意点があります。裁判で値上げが正当と確定すると、払った額との不足分に年1割(1年で10%)の利息を付けて払います(32条2項ただし書)。

たとえば(仮の例)、家賃10万円に1万円の値上げを求められ、10万円を払い続けたとします。1年後に裁判で10万5,000円が正当と決まると、不足は月5,000円×12か月=6万円です。これに、毎月の払うはずだった日からの年1割の利息を足して払います。1年後にまとめて払うなら、利息は3,000円ほどです(当サイトの概算)。「払わなければ得」というしくみではありません。

更新のときに「値上げしないなら更新しない」と言われたら?

期間の決まった普通の借家契約の話です。貸主が「更新しない」か「条件を変えなければ更新しない」と伝えるには、期間が終わる1年前から6か月前までに通知が要ります。通知がなければ、同じ条件で更新したものとみなされます(26条1項)。これを法定更新といい、その後は期間の定めがない契約になります。その後も、貸主が契約を終わらせるには正当な理由が要ります。

通知をするにも、正当な理由(正当事由)が要ります(28条)。正当事由は、貸主と借主がその建物を必要とする事情、これまでの経過、建物の状態、立退料の申し出などで判断されます。東京都は、値上げに応じないことを理由に、貸主が更新を断ることはできないと案内しています。

通知があっても、期間が終わった後に借主が住み続けることがあります。そのとき貸主がすぐに異議を言わなければ、更新したものとみなされます(26条2項)。通知が来たら、住み続ければよいと考えず、相談窓口で確かめましょう。

更新料は払わないといけない?

民法や借地借家法には、更新料を払う義務の定めはありません。更新料は、契約書の条項(特約)で決まる支払いです。

最高裁判所の2011年(平成23年)7月15日の判決は、契約書にはっきり具体的に書かれた更新料の条項について判断しました。消費者契約法10条は、消費者に一方的に不利な条項を無効にする決まりです。判決は、更新料の額が家賃や更新の期間にくらべて高すぎるなどの特別な事情がない限り、この条項は無効にならないとしました。

この事案は、京都市の家賃月3万8,000円の部屋で、更新料は家賃の2か月分(1年ごとの更新)でした。契約書に「法定更新でも払う」と書かれていたため、法定更新のときの未払いの更新料も、払うよう命じられました。

これは、この契約書の書き方を前提にした判断です。定めがない、法定更新のときの扱いが書かれていない、額が高すぎるなど事情がちがえば、結論も変わりえます。契約書を持って相談窓口でたしかめてください。

関東の相談窓口はどこ?

迷ったら、まず消費者ホットライン188に電話しましょう。どの都県からでもかけられます。下はどれも無料の公的な窓口です(電話の通話料はかかります)。内容によっては、弁護士への相談を勧められます(2026年10月6日確認)。

地域窓口家賃の値上げの相談
全国消費者ホットライン 188近くの消費生活センターなどにつながる(土日祝は国民生活センターの場合あり)
全国法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時)法制度と相談先の案内。個別の法律相談はしない
東京都賃料値上げ特別相談窓口 03-5320-4958(都庁開庁日9時〜17時30分)対象。2025年10月10日開設。必要なら弁護士の無料相談を紹介
東京都東京都消費生活総合センター 03-3235-1155対象(2026年3月3日に注意をよびかけ)
神奈川県県の「不動産・建設業に関する相談窓口一覧表」法テラス、県弁護士会、県司法書士会、県の法律相談、市町村、消費生活相談窓口を案内
群馬県ぐんま住まいの相談センター 027-210-6634住まいの相談全般(値上げを受けると名指しした記載はない)

※表は、家賃の値上げの相談先として案内のある窓口にしぼりました。東京都不動産取引特別相談室(弁護士・司法書士の無料相談、対面・予約 03-5320-5015)もあります。

埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の人は、188か法テラスへ。これらの県の宅建業(不動産会社の仕事)の窓口は、原則として宅建業法の範囲の相談です。宅建業法は入居までの仲介を決める法律で、更新や家賃の改定には及びません(神奈川県・埼玉県の説明)。群馬県は、家賃の値上げを対象外としています。

値上げを機に、買うことも考えるなら

家賃は上がっています。国の統計の消費者物価指数(物の値段の動きを表す数字)を見ます。東京都区部の2026年9月分(中旬速報値)では、民営家賃が前の年の同じ月より2.2%上がりました(総務省統計局、2026年10月7日確認)。これは今住んでいる人が払っている家賃の動きです。新しく借りるときの募集の家賃とは同じではありません。

買うと、ローンの返済に加えて、管理費・修繕積立金・固定資産税などもかかります。今の家賃と、買った場合の毎月の支払いを比べてみましょう。目安は予算の逆算シミュレーションで出せます。借りる額の考え方は「住宅ローンは年収でいくらまで?」にあります。引っ越すなら退去費用(原状回復費用)は誰が払う?も参考になります。

この記事は、2026年10月6日時点の法令と公的機関の公表資料にもとづく一般的な説明です。値上げや更新料に応じる必要があるかは、契約の内容や事情で変わります。具体的な判断は、上の相談窓口や弁護士にご相談ください。

更新履歴(1件)

  • 知識のない人にも分かるよう、文を短くし、言葉の言い換えと具体例を足した(数字・条件は変更なし)(冒頭の3行でわかる結論、家賃10万円・1万円の値上げの仮の例を追加。確認の表を箇条書きに、判決の事案の表を文に、相談窓口の表を値上げの相談先として案内のある窓口にしぼった)

出典(22件)

最終確認日:2026年10月6日 / 関連:退去費用(原状回復費用) / 予算の逆算シミュレーション / 年収でいくらまで借りられる? / 住宅ローン返済シミュレーション